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※この話は、「獣の奏者? 王獣編」のその後を設定にして書いてます。
ので、まだ読んでない方は読まないで下さい!!
もしどうしても読みたいという方は止めませんが・・・。
自分は読んでも大丈夫!って方のみどうぞ ↓ ↓ ↓
内紛が治まり、闘蛇を操る大公の息子であるシュナンと、新王セィミアの婚約に、市民の戸惑いは大きかった。
しかし、いざ結婚式の日取りが決まると、次第に新たな王の結婚というめでたい知らせに、国中が沸いていた。
キョザ新王国は、今までとは大きく異なった、新たなる王国へといま、生まれ変わろうとしている。
その頃、エリンは人里離れた山で、リランたちと暮らしていた。
「いい天気・・・」
山での暮らしには特に不自由がなかった。
というのも、ジョウンとの生活で培ったものがあったからで、エリンには慣れたものだった。
エリンは晴れ渡る空を見上げ、うんと腕を伸ばし、大きく息を吸って深呼吸をした。
朝起きてからの深呼吸は、ここに棲んでからの日課となっていた。
ジョウンと一緒に住んでいた頃、毎朝二人でよくやっていたのを思い出したからだった。
ふと、少し離れた所にリランたち親子がいるのを見とめ、エリンはやさしい眼差しを向けた。
自然の中にいることで、制限なく動き回れることからか、リランたちは以前よりも活発になり、より生き生きとし始めたことが、エリンは何よりも嬉しかった。
********
「この川の水はどこに流れて行くんだろう・・・。うん、今日はこの川沿いを行ってみよう」
そう言うと、エリンはいつも水を汲みに来ている川の川沿いを歩み始めた。
住み始めてからしばらく経つものの、エリンはまだ住んでいる山小屋の周辺を完全に把握していなかったので、毎日思うままに歩き、少しずつ山を散策していた。
しばらく川沿いを下った先で、一頭の馬が水を飲んでいるのを見つけた。
それはたまに見掛ける光景だったが、その馬には人が乗るための装具が付けられていた。
――人がいる。
辺りを見回すが、人影は見当たらなかたった。
「・・・」
辺りの様子を窺いつつも、馬のいる先へと歩いて行った。
ふいに馬は水面から頭を離し、エリンの方を向いた。エリンの存在に気付いたのだ。
すると、その馬はよほど人に慣れた馬だったのか、エリンのそばへと寄ってくると、額を寄せてきた。
そこで、エリンは手を伸ばし、馬の額を撫でやると馬は喜んだのか、さらにエリンに頭をすりよせてきたのだ。
エリンは微笑んだ。
馬に触るのは久しぶりだったので、ついしばらく撫でていた。
ピクッ
大人しく撫でられていた馬の耳が動き、エリンの背後に目をやった。きっと、この馬の持ち主が来たのだろう。
名残惜しく、もうひと撫でし、振り返ろうととした時だった。
「エリンか?」
「!?」
急いで振り返ればそこに、イアルがいた。
「イアルさん!?」
まさかイアルがいるとは思っていなかったエリンは、驚きすぎてイアルを見たまま固まってしまった。
その様子に苦笑しつつも、イアルはエリンの傍まで行くと、エリンの顔を覗き込んだ。
「元気そうだな」
すぐ近くにイアルの顔がある驚きで、はっとエリンは我に返ると、とびきりの笑顔で答えた。
「はい! イアルさんもお元気そうで!
ところで、イアルさんはどうしてこんな所へ?」
「それは、セィミア様からの使いでエリンに訪ねて来たんだ」
エリンの顔から笑顔が消えた。
「・・・えっと、結婚式の件なら、前に断ったはずですけど」
エリンは困ったようにそう告げると。
「分かっている、俺もそう申し上げたんだ。だが、エリンには悪いとは思いつつもセィミア様に説得されてしまってな」
と、イアルも苦笑しつつ困ったように答えた。
「エリン、どうかセィミア様の結婚式に出席してもらえないだろうか。
セィミア様のこれから歩んでいく道は、決して楽な道ではないだろう。そして、その道をセィミア様に指し示したのはエリンだ」
はっと、エリンはイアルの顔を見た。
「あぁ、エリンを責めてるんじゃない、その道を歩んで行くことを決めたのはセィミア様自身なのだから、その事に後悔はないと言っていた」
それを聞いてエリンはほっとしていた。それとともに、ほっとしている自分に嫌気がした。
私があの時、セィミア様に王獣のことなどについて話していなかったら、間違いなく今とは別の道を歩んでいたのは事実なのだ。
今更それを考えたところで、どうしようもない事は分かっていたが、考えずにはいられなかった。
あんなに無垢でいようとしていた人を、私が変えてしまったんだ・・・。
「ただ、その道を指し示してくれたエリンに、これから歩む道の始まりを見て欲しいのだと懇願されてな・・・」
「そう、だったんですか」
「どうだろう、来てもらえないだろうか?」
少しでもセィミア様のためにできる事なら何でもしてあげたいと思うのだが、エリンには行けない訳があった。
「・・・でも、前に断る時に言ったように私はもう大勢の人の前に出たくないんです。
結婚式に出席する人の中にはあの日、私が王獣の背に乗ったのを見た戦蛇乗りの人がいるはずです。
だから、もうその事を少しでも忘れてくれるように、私の存在を思い出さないためにも、私は出席したりして見られる訳にはいかないんです」
切々と語ったエリンに返された言葉は、拍子抜けするものだった。
「あぁ、その事なら問題ない」
「えっ?」
「もう手は打ってある」
そう言って、イアルが説明したものは、確実にエリンだと分からないように結婚式に出席できる計画だった。
それは、たとえ周りから見られたとしても、エリンだとは分からない方法だったのだ。
「俺が責任を持って君を守る、だから・・・」
エリンにはもう、選ぶ道は一つしかなかった。
「・・・断る理由がなくなってしまいました」
困ったように言った後、今度は笑って言った。
ちゃんと守って下さいね。
********
「わざわざこんな遠い所までありがとうございました」
「いや、こちらこそ礼を言いたいくらいなんだ。こんな自然溢れるところに普段来ることはないからな、いい気晴らしになった」
イアルは笑った。晴れ渡る空のような、とてもすっきりとした笑顔だった。
以前のイアルでは考えられなかったことに思い至ると、エリンはこの国の変化を見た気がした。
――― この人がいつも、こんな顔をしている未来が来ると良い、そう思った。
・・・・・そんなイアルを想像してしたものの、妙にしっくりこないことにエリンは笑ってしまった。
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文章を作るのは苦手なので、ここまで長いのを書いたのは初でした。
イアル×エリンのssを書いてらっしゃるサイトをまだ発見したことがなかったので、自分で書いてみちゃいました。
・・・とかいって、あんまりイアル×エリンって感じになりませんでした!(汗)
大まかなあらすじはいつもパッと浮かぶのですが(主に授業中ですケド・・・苦笑)、それをまとめることが苦手なのと、書くぞ!って思って細かく想像しても、ちゃんと書かずにだいたいを想像しちゃってそれで自己満足して終わってしまうんです。
なので、これを書くのに結構苦戦しました。
でもなんとか書けてよかったです。う~ん、文章って難しい・・・。
もし、イアル×エリンを書いていらっしゃる方がいたら教えて下さい☆
喜んで遊びに行かせていただきます!