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香陽
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専門学生
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どうも最終回を終えた作品にハマってしまう習性を持っているのか、「おじゃ魔女どれみ」見てます。
好きなアニメは色々あるのですが、小野主上の「十二国記」「ゴースト・ハント」や「彩雲国物語」、「魔人探偵脳噛ネウロ」、「獣の奏者 エリン」など、原作のある作品はアニメと原作で両方楽しめるので好きですね。
そして、好きな作品の二次創作サイトを巡るのも大好きです。
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ジャンル不定の二次イラスト、小説サイトです。

sitename: Hot milk
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相互リンクさせていただいてます「空から雫、地からは花」のアンジェから頂きました!
バレンタインフリーということで、バレンタインのお話です。
スカナル・ガスナルの二つが楽しめて、これまたとっても良かったですよ。










「ナーシア。チョコレートを作りなさい。」

それは何時ものようにファティ・リンシャの厳命から始まった。


―Happy or Unhappy ?―


口を開けたまま閉まらないナルレイシアにファティ・リンシャはふふ、と微笑んだ。
その微笑みはまるで春の女神のようだったが―――……実は腹黒い企みを披露するときの笑みだったりする。

「え、な、何で……。」
「ふふ、それも普通のチョコじゃないのよ。」
人の話を聞かず、己の道を突き進むファティ・リンシャ。この時ほどの彼女ほど怖いものはないとナルレイシアは思う。
「中はね、当たりつきなのv」

語尾にハートをつけて言われた一言にナルレイシアは暫し呆然となる。

「…………へ。」

当たりつきとは何か。希少な本でもくれるのか。

思わず身を乗り出したナルレイシアにファティ・リンシャはにっこりと微笑む。


「1人の中にだけ、たった1個だけ唐辛子をたっぷり入れるのvvv」


「…………ファティ・リンシャ。それはハズレ付きと言うんじゃ………。」
「うふふv」


……………うふふって貴女………。

「もちろん、私の分とナーシアの分も作るのよ。誰が当たるのか楽しみだわ。」
「……………ファティ・リンシャ………。」
「なぁに?」
「さすがに、それはどうかと………。」
「ナーシア。」
「はい。」


にっこり。


「つ・く・り・な・さ・い・?」



「………ハイ………………ワカリマシタ…………………。」


ファティ・リンシャの微笑みは、泣く子(?)も黙らせる。



―†―

元々料理は得意な方だ。
ボールの中に刻んだチョコを入れ湯煎で溶かしながらナルレイシアはため息をつく。
手際よくチョコトリュフを作って行く。
そして、材料が、残り少なくなってきた。ファティ・リンシャには1袋に5個ずつトリュフを入れろと指示してきた。そして5個の内の1個だけ激辛唐辛子を入れろと。
作るのはガスカール・スカー・アマンシール・ネイスリーズ・ランディータ・ファティ・リンシャ…………そして、自分だ。


その中の1袋だけ。その1袋だけの5つのチョコトリュフの内の1つだけに激辛唐辛子が入っている。


『……………………ごめんなさいっ……!!!』



ドッサ―――――――ッ。


ナルレイシアは、唐辛子を入れた。


――†――


ナルレイシアはチョコを皆に配った。その際に一応唐辛子入りが含まれている事を伝えたが、皆黙って微笑むだけだった。

「唐辛子が当たっても良いのかしら………。」

スカーの部屋に向かう途中、ぽつりとナルレイシアは呟いた。
「スカーさん、バレンタインチョコです。」
はい、この中から好きなの選んでください。と籠を突き出すとスカーは照れたように笑って包みを1個取った。

「じゃあ、これをいただきます。」

その笑顔に若干引け目を感じながらナルレイシアは引け目を感じている原因となっている唐辛子の説明をした。
するとスカーは優しく微笑んで「ああ、それなら私は大丈夫です。」と言う。

「? 何でですか?」

スカーはするすると包みのリボンをほどき、チョコトリュフを1つ、何の躊躇いもなく口に含んだ。そして咀嚼する。


「とても、美味しいです。ヴィル・ダカール。」


そう言ってもう一個、包みからチョコトリュフを手に取ると、ナルレイシアの口に含ませた。


「!」


「ね?美味しいでしょう?」

スカーの笑顔とその行為にナルレイシアは顔を真っ赤にして。

「はい………。」

と呟くしかできなかった。


――††――


「スカーさんは時々天然タラシよね。」
まだ赤い頬を押さえ、ナルレイシアはガスカールの部屋に向かう。
当たり前のように疑問に思うが、ガスカールに『ありがとう』と言わせることができるのだろうか?

『あのガスカールだしねぇ……。』

『あの』、と言われるガスカールもガスカールだが『あの』と言うナルレイシアもナルレイシアだ。
そうこうしてる内にガスカールの部屋についてしまった。


さて。どうするか。


ナルレイシアは扉の前で固まった。
普通に受け取られるか………もしくは心から嫌そうな顔をされるだろう。

はぁ、とナルレイシアはため息をついた。

何か嫌な顔をされるくらいなら渡したくないと言うか………紳士的なスカーさんの後だから余計そんなこと思っちゃうのよね………でもファティ・リンシャに『絶対渡しなさい。』と言われてるから渡さな「人の部屋の前で何を突っ立っているんだ山猿」いといけないし………。


って、え?山猿?


「さっさとそこをどけ。」

とっさに隣を見るとそこには不機嫌な顔をしたガスカールが立っていた。

「何か用か。」
「えっと、その………。」

不穏なオーラを背負ったガスカールにナルレイシアはただおろおろと『えっと』を繰り返すばかりだ。

ええい。こうなりゃ無理矢理にでも渡すしかないわ!!

ナルレイシアはずいっとガスカールにチョコの入った籠を突き出した。

「あげるわ。」
「は………?」
「バレンタインでしょ!今日。だから皆に配ってるの!早く取ってよ!」

あぁもう何か恥ずかしい!
何であたしがガスカールにチョコをあげるのに照れなきゃいけないのよ!

ナルレイシアは半ばやけくそ気味に籠を突き出していた。
すると少しだけ籠が軽くなる。

驚いて、ガスカールの顔を向くと、ナルレイシアは大きな目を見開いた。


何とガスカールは微笑んでいたのだ!!!


「感謝する。」
「え、あ、はい………。」
「部屋に入る。退け。」
「ええ………。」


パタン。


扉が閉まり、ナルレイシアはその音で我に帰った。
フラフラと自室に帰り、自分に残ったチョコの包みを開く。


―――――完全に失念していた。

ガスカールは、美形だった。

普段があまりにもムカつく奴だったので忘れていたが、ガスカールは10人に聞けば10人とも『美形』と帰ってくるくらい、美形だったのだ。
そして、普段は笑わない人ほどその笑顔の殺傷能力は高い。


「……………――反則っ……!!」

ナルレイシアはポイポイとチョコトリュフを口に放り込んで行く。最後の1個になった時、そう言えばガスカールに注意してなかったな―――……と思い立ち、最後のチョコを口に放り込んだ。



「~~~~~~~~~~~っっっっっ!!!!!!」


―――――――当たった。


―†―

『~~~~~~~~~~~っっっっっ!!!!!!』

「あら、やっぱりね。」
ファティ・リンシャは屋敷中に響き渡ったナルレイシアの叫び声を聞き、微笑んだ。
彼女はゆっくりチョコトリュフを口に含む。

「ふふ、美味しい。」

最初から、誰に当たるかは見えていたものだった。
何故ならナルレイシアの周りに居る人達は皆大変運が良い。
そして彼女は『強運』に愛されていると同時に『凶運』にも愛されている。
そんなナルレイシアが、唐辛子入りチョコに当たらない筈がないのだ。

ファティ・リンシャはトリュフをゆっくり飲み込むと、紅茶を飲んで、一言、言った。


「さぁ、次はホワイトデーね。」


彼女の受難の日々は、もう暫く続きそうである――――……。


―Fin―




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