日が暮れた頃、金波宮の外れに主人の王気を感じ、景麒は気配を追って歩を進めた。
王気を感じた場所は、金波宮でも本当に外れで滅多に人の来ることのない、小さな庭だった。
そこに、陽子はいた。
「主上、そんな所に居ては冷えますよ」
「来たか、景麒」
「・・・?」
まるで、待ち構えていたかの様な陽子に戸惑いながらも、景麒は主人の側に行った。
陽子は景麒を見上げ、笑った。
「今日はな景麒、あちらの世界ではバレンタインという日なんだ」
「バ、バレンタイン・・・ですか?」
「そうだ。バレンタインというのはな、・・・日頃の感謝を込めて、とてもお世話になった人にチョコレートっていうお菓子をあげる日なんだ」
そう言うと、陽子は袖から四角い箱を取り出した。
飾りの着いたそれは、景麒には嗅いだことの無い甘い香りがした。
「これを、受け取ってくれるか?」
少し恥ずかしそうに、飾りの付いた箱をを差し出してくる陽子に、景麒は微笑み、受け取った。
「ありがたく頂戴いたします。
・・・では、私も主上に差し上げたいのですが、あちらでは何をお返しするのですか?」
予想外の質問に、陽子は驚いた。
「よく、気付いたな・・・。
あちらでは、今日からちょうど一月後にお返しに飴とかお菓子をあげるんだ」
「お菓子ですか、なるほど、ありがとうございます。
では一月後、お返しさせていただきます」
まさか、ホワイトデーにお返しを貰えるとは思っていなかった陽子は、驚きと嬉しさもあったが、それよりも、なんだかくすぐったい気持ちになった。
「そうか、ではお返しを期待・・・しているぞ?」
陽子は悪戯っぽい笑みを向けた。
それに景麒は戸惑いつつも、少し困ったように笑った。
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今日はバレンタインというコトで、バレンタインネタで。
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